薬剤師調査MMPR

Report : 薬剤師3分トピックス

掲載日:2018/03/28

〔特集〕自社(自店)の進むべき方向性を確認しよう





今年2月7日の中央社会保険医療協議会で示された2018年改定の答申資料「別紙1-3(調剤報酬点数表)」では、点数が引き上げられた項目は主に薬学管理料にありました。例えば、

▽重複投薬・相互作用等防止加算
 30点→40点
 (残薬調整に係わるもの以外の場合)
▽服薬情報等提供料 20点→30点
 (医療機関からの求めがあった場合)
▽服用薬剤調整支援料の新設 125点

 など、各種算定要件の見直しや点数の引き上げが図られました。
 これらの点数項目は、提供したサービスに対する評価であり、ある意味「出来高報酬」とも言えます。一方、点数が引き下げられた項目には、調剤基本料の算定要件がありました。大型門前薬局や敷地内薬局の評価に関し、施設基準の見直しなどが図られました。他にも、地域支援体制加算35点が新設されましたが、基準調剤加算32点が廃止されました。これら調剤基本料関連の点数は受付患者の全てに関わる項目で、薬局運営の「ベース報酬」とも言えます。点数の増減があると薬局の調剤報酬全体に影響します。
 短期的な視点で薬局経営を考えると、影響が大きな「ベース報酬」の増加余地の検討が優先されるでしょう。その上で「出来高報酬」のプラス幅を最大化することになります。しかし、この短期的な視点だけで継続的に成長することは困難です。調剤報酬改定などの環境変化に対応した薬局の体制構築には、新たな投資や長期間の取り組みが必要となることがあるからです。例えば2018年改定で「地域支援体制加算」「服用薬剤調整支援料」などの新設や、「後発医薬品調剤体制加算」の調剤数量割合の基準引き上げなど、薬局の現状によっては対応に準備や長期間の取り組みが必要となる改定項目が多くあります。環境変化の全てを予測することはできませんが、個別の改定項目の「目的(狙い)」を理解し、長期的な視点で「変化に対応できる体制構築」が成長のカギと言えるでしょう。
 改定項目の「目的(狙い)」は、「診療報酬改定の基本方針」から把握できます。2018年改定においても、2017年12月11日の社会保障審議会 医療保険部会で「平成30年度診療報酬改定の基本方針」(以下、「基本方針」)が示されました。「基本方針」に基づいて、中医協で具体的な診療報酬点数の設定などの審議を行った結果が改定案として答申され、改定に関わる告示・通知の発出につながります。
 つまり、改定項目の「目的(狙い)」である「基本方針」と自薬局の現状のギャップを確認することが、本質的な問題に着目した取り組みの第一歩ではないでしょうか。



 2018年改定の「基本方針」の内容は、「1.改定に当たっての基本認識 2.改定の基本的視点と具体的方向性 3.将来を見据えた課題」で構成されています。
「改定の基本的視点と具体的方向性」では、次の4つ「基本的視点」*1 が明示され、2018年改定の答申資料「個別改定項目について」の章構成とも一致します。
 基本的視点のそれぞれに「具体的方向性の例」が記載されており、薬局が対応すべきことや、解決すべき課題を把握できる内容になっています。中でも、地域包括ケアシステムの構築は、基本的視点で【重点課題】とされる喫緊の課題です。2025年にはいわゆる団塊の世代が全て 75 歳以上の高齢者となるなど人口の高齢化が急速に進展する中で、2025年を目途に「どこに住んでいても適切な医療・介護を安心して受けられる社会の実現(地域包括ケアシステムの構築)」が求められています。
そのための具体的方向性の一つとして、「かかりつけ薬剤師・薬局の機能の評価」が示されています。

*1 出典:2017年12月11日 社会保障審議会 医療保険部会「平成30年度診療報酬改定の基本方針」より抜粋





 2018年改定の「目的(狙い)」を把握するうえでは、「基本方針」で重ねて強調されている「効果」と「効率」というキーワードも重要と考えます。「効果」は、成果の大きさを問います。患者の状態などに応じて、いかに質の高い医療を提供するかという視点で、「薬局への期待」にどれだけ応えているかを問います。「効率」は、いかに少ない資源(医療コスト)で効果を高めるかという視点です。医療資源が限られている以上、「効率」も求められ、保険者や患者など費用負担者の立場では、効率そのものが「薬局への期待」となることもあります。
 例えば、基本的視点「(1)地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化・強化、連携の推進」の具体的方向性では、「薬物療法の有効性・安全性を確保するための、服薬情報の一元的・継続的な把握とそれに基づく薬学的管理・指導が行われるようかかりつけ薬剤師・薬局の評価を推進する」など、質の高い医療としてかかりつけ薬剤師・薬局による機能発揮が求められています。これらには、患者や行政、多職種等の期待が含まれています。また、「(4)効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上」の具体的方向性では、後発医薬品の推進や残薬削減、重症化予防等があります。費用負担者の立場で効率が求められています。



  前述のとおり、改定項目の「目的(狙い)」である「基本方針」には、薬局が対応すべきことや解決すべき課題など「薬局への期待」が具体的に提示されています。何から優先的に取り組むのかは各薬局の考え方や現状(達成状況)により異なるでしょう。
 株式会社ネグジット総研(本社・兵庫県神戸市)では、「基本方針」の内容を踏まえ、調剤報酬改定の課題に関するアンケート調査を実施しました(図1)。対象は、薬局経営者・経営幹部100名、保険薬局に勤務されている全国の管理者(管理薬剤師含む)150名です。



 
 図2は、「基本方針」の視点に基づいて、薬剤師調査MMPRが設定したキーワード(薬局への期待)別に今後の取り組み方針を薬局経営者・経営幹部と管理者に同様に調査し、「極めて積極的」と回答した人の割合を示しています。経営者では上位から「後発医薬品の使用促進」(49%)、「医薬品・薬物治療に関して安心して相談できる身近な存在への取り組み」(32%)、「重複投薬の防止(残薬調整含む)」(28%)の順でした。一方で、管理者では上位から「後発医薬品の使用促進」(43%)、「重複投薬の防止(残薬調整含む)」(35%)「薬についてわかりやすい説明への取り組み」(22%)の順でした。
 薬局経営者・経営幹部と管理者でギャップの大きな項目としては、「ICT(IT)等の新たな技術の導入」「医薬品・薬物治療に関して安心して相談できる身近な存在への取り組み」「かかりつけ薬剤師の取り組み」などで薬局経営者・経営幹部が管理者よりも「極めて積極的」と回答する割合が多い結果でした。
 一方で、管理者が薬局経営者・経営幹部よりも「極めて積極的」と回答する割合が多かったのは「重複投薬の防止(残薬調整含む)」でした。現状の認識や取り組みの優先度に対する考え方に違いがある可能性があります。本調査のように、組織内での認識が一致しているか確認されてはどうでしょうか。






 環境変化に対応した組織体制の構築では、サービスに関わるすべての人が良好な関係で協力し、価値実現を目指すことがポイントだと言われます。薬局にとっての「顧客」、つまり来局する患者だけでなく、行政や保険者、そして地域住民など利害関係者のそれぞれの期待をまず把握し、良好な関係を築くことが欠かせません。
 前述の図2のキーワード(薬局への期待)でいえば、「後発医薬品の使用促進」は行政や保険者からの期待、「医薬品・薬物治療に関して安心して相談できる身近な存在への取り組み」は患者や多職種からの期待、「重複投薬の防止(残薬調整含む)」は行政、保険者、患者からの期待が主ではないでしょうか。
 図2のアンケート結果のように、現状の認識や取り組みの優先度に対する考え方に違いがあるケースでは、それぞれが持っている情報が違うことが要因の一つとしてあります。
 図3は、利害関係者からの期待の把握状況について、主な利害関係者ごとに調査した結果です。前問と同様に「極めて積極的」と回答した人の割合を示しています。その上位は、「患者が期待していること」で薬局経営者・経営幹部が29%、管理者が15%、次いで「地域住民が期待していること」で薬局経営者・経営幹部が26%、管理者が14%でした。
 薬局経営者・経営幹部と管理者で回答割合の順位が異なるものとして、「行政が期待していること」「多職種が期待していること」「従業員(部下)が期待していること」があり、管理者に比べ、薬局経営者・経営幹部は積極的に把握している割合が多い傾向にありました。
 サービスに密接に関わる利害関係者は誰で、どのような期待があるのか、その期待に対してどのようにバランスを取りながら応えていくのか、といった視点の摺り合わせが必要かもしれません。



 図4は、本調査で実施した薬局経営者・経営幹部が関心のある「経営や業務に関する課題」のアンケート結果です。回答割合の高い項目は、上位から順に「経営戦略・方針策定・明確化」(57%)、「店舗業務の質向上、効率化」(42%)、「人材採用(中途)」(39%)、「人材採用(新卒)」(38%)でした。
 「経営戦略・方針策定・明確化」が上位になった要因には、調剤報酬改定含め、著しい環境変化を背景に、自社(自店)の進むべき方向性を確認したいことがあると推察します。一般論として、経営戦略では「何をやるべきか、何をやめるべきか」を明確にすることが重要と言われます。そのためにも、改定項目の「目的(狙い)」である「基本方針」と自薬局の現状からギャップはないのか? 様々な利害関係者の期待を把握し、その期待に応えることが出来ているのか? という視点で、振り返ってみてはいかがでしょうか。
 自社(自店)の進むべき方向性を考えるヒントになれば幸いです。




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