薬剤師調査MMPR

Report : 薬剤師3分トピックス

掲載日:2017/04/07

〔特集〕「かかりつけ薬剤師指導料」で薬局経営新時代へ




同意取得は8人、拡大は無理ない範囲で 

 株式会社メディカルファーマシィーが展開するミキ薬局は、東京都内を中心に29店舗を数える。そのひとつ、ミキ薬局河田町店は隣接する東京女子医科大学病院と付属の膠原病リウマチ痛風センターから月平均1500 ~ 1600枚の処方箋を応需している。薬剤師6人のうち3人がかかりつけ薬剤師として活動する。
 河田町店の小塚貴子店長は、かかりつけ薬剤師を育成するための社内のプロジェクト型研修に参加。研修で得られたことをベースに個人個人で考えてもらい、そのス キルを店舗内に浸透させる方法を取った。ただ、2016年春の段階ですべてのスタッフの意識が高かったわけではない。小塚店長本人も「かかりつけが薬局という施設で はなく、薬剤師として患者さんと1 対1で接することに不安もありました」と本音をもらす。
 
店舗全体で対象となりそうな患者を薬剤師1人あたり10人程度ピックアップし、小塚店長が薬歴を見ながら訴求できるポイントを検討。各薬剤師にその内容を伝えて患者への説明を開始し、同年夏から本格的に同意書を取り始めた。これまでに20人程度に声をかけ、8人から同意を得ている。
当初ピックアップした患者とは別に、会話の内容からサポート体制をとるべきと感じて声かけした結果、同意取得できたケースもあった。8人の年齢は60 ~ 70 歳代が中心で全員が女性。処方箋を応需する医療機関のひとつが女性患者の多い膠原病リウマチ痛風センターということもあるが、処方薬の質問をしたり関心を向けるのは女性が多いからだ。
 河田町店では現在の8人より広げていきたいと考えるが、やみくもに同意取得すればいいわけではない。患者の服薬サポートを確実に行うためにも、「薬剤師1人で3~5人が無理のない範囲」(小塚店長)と見ている。
 
職能発揮で多職種連携進む

 かかりつけ薬剤師となったことでの最大の変化は、対象患者ごとに半年スパンの「服薬支援計画」(図1)を作成したことだ。

図1 ミキ薬局河田町店の服薬支援計画書


それぞれの生活環境や健康状態に合わせ、薬剤師や訪問看護師などの役割を月単位でマトリックスに落とし込んだ。ひとつの例を挙げると、13 種類の薬剤を服用する独居の高齢女性に対し、「最終アウトカム」として「薬剤の適正管理による健康寿命の延伸」と「1人当たり生涯医療費の削減」を提唱。その達成に向けた「当面のアウトカム」は、「臨床的=血圧120 ~ 130維持、便秘解消、残薬なし」「患者立脚型=1人で買い物に出かけることができる」とした。
 薬剤師は血圧や便秘状態の把握のほか、ほてり、ふるえ、こわばりといった体調面も確認。処方変更の必要性が情報として医師に届いているかもチェックする。計画は2016 年10月~ 2017年3月で、実施状況を見ながら内容を随時更新していく。半年間の期間が過ぎれば患者の体調や季節などを勘案し、新たな計画として継続。患者ごとに関与すべき医療者を見極め、さらに適切な内容にブラッシュアップしていく。
 計画を実施する中では、COPD(慢性閉塞性肺疾患)にも関わらず禁煙しなかったり、肝障害で腹水がたまり歩行困難など対応が難しい患者もいる。そのため、薬剤師には通常の業務を超えた一定の負荷がかかる。訪問看護師や栄養士、ケアマネージャーなど他職種との連携にも時間を要するが、「今までより深く患者さんに接するため、必然的に薬剤師の知識レベルが上がっていきます。この延長線上で健康サポート薬局や本格的な在宅訪問へとつなげていきたい」と前向きにとらえる。
 実際、服薬支援計画を導入したことで在宅に出向くようになり、患者の生活や医薬品の管理状況にも目が行き届くようになった。これまでは来局時しか情報が得られなかったため、業務に負荷がかかっても職能発揮の瞬間を実感することができる。 24時間の相談体制については、以前から携帯電話で受けていた。しかし、深夜にかかってくることはなく、現在でもそれは変わらない。業務が苛酷になるとの指摘が一部にあるが、現実を見る限り杞憂に終わったようだ。

医療機関への情報提供に足掛かり

 これまでを振り返って課題として感じることは、医師とのコミュニケーションの難しさだ。ケアマネージャーや看護師とは調整しやすいが、医師はハードルが高くなりがち。手紙を出して情報を伝えても一方通行になることもある。「中小病院はアプローチしやすいのですが、大病院は情報伝達の流れがつかめません。そこがクリアになれば、もう少しスムーズな患者サポートができるのではないかと感じています」。
 かかりつけ薬剤師の職能の認知は浸透し始めたばかりであり、その普及に向けた取り組みも薬剤師側の課題のひとつになりそうだ。ただ、患者個々の服薬支援計画によって、連携の足掛かりをつかむことはできた。医療機関への情報提供は疑義照会程度しかなかっただけに、小さいながらも確実な一歩を踏み出している。




調剤にこだわらない相談体制 


たむら薬局は東京都練馬区で2店舗を運営している。西武池袋線江古田駅をはさんで立地する栄町店と旭丘店は、薬剤師が合わせて6人、月約3000枚の処方箋を応需する。
 地元・江古田で生まれ育った田村憲胤(のりつぐ)社長は、地域密着型の薬局経営にこだわりがある。子供のころから町の薬局でさまざまな相談に乗ってもらったりOTCの説明を受けた経験から、OTCに携わる仕事がしたいと思い、大手チェーンのドラッグストアに就職。その後、地元の薬局から経営の引き継ぎを頼まれた。
現場をのぞくと調剤をはじめ介護関連やOTCの相談がひきもきらず、「患者さんの健康に役立っていることを実感」(田村社長)して、地域に根を張る覚悟を決めた。
 こうした背景から、かかりつけ薬剤師の届出にあたっては、処方箋調剤だけでなくあらゆる相談に的確に対応しようと考えた。それがたむら薬局の運営方針でもあった。2016年度の調剤報酬改定で制度化され
た際にも、「これまで実践してきたことの延長線上」であることをスタッフに伝えた。

 以前から特定の薬剤師を頼って来店する患者や客は少なくなかった。名指しで電話もかかってきた。栄町店の場合、1日約100人の来店がある。そのうち何人かは特定の薬剤師と信頼関係が出来上がっているのだが、順番に調剤していくので両者がうまく相対するとは限らない。かかりつけ薬剤師の同意を取得すれば、こうしたジレンマも解消される。
 現在、かかりつけ薬剤師の届出をしているのは6 人のうち3 人。残りの3 人は要件の「勤務経験3年以上」や「在籍期間半年以上」に該当しないからだ。これまでに同意取得できたのは50 ~ 60歳代の4人で、薬剤師がそれぞれ可能性が高いとみられる患者に声をかけた。「制度がスタートしたときに、『この人は』と思う人に説明しました」(田村社長)。対象を絞ったこともあって、断られることもなくスムーズに同意を得られた。
 かかりつけ薬剤師指導料の算定にあたっては、勤務体制上のハードルもある。調査会社のネグジット総研が実施したアンケートによると、「24時間対応なので夜中の電話が心配」という声が目立っている。
田村社長は「以前から店舗の携帯電話で対応してきましたが、24時間といっても深夜に呼び出されたことはありません。休日の場合も薬を届けてほしいというより、飲み合わせを尋ねてくる程度です。対象となる患者さんの処方は頭に入っているので、その場で返答できます」と話す。医療に関わる地域活動への参画についても、5~6年前から学校薬剤師を引き受けるなど実績を積んできた。

慢性疾患患者に電話で状態確認


 そもそも調剤報酬による点数化以前に、かかりつけ業務には高い意識を持っていた。それは、明治薬科大学と保険薬局経営者連合会(薬経連)が共同で実施する薬剤師中間介入研究「PIIS(ピース)研究」(図2)への参加だ。

図2 明治薬科大のPIIS研究


地域の薬局が長期処方を受けている慢性患者に対し、来店の有無に関わらず月1 回は健康状態や残薬などを電話で確認。定量的に評価してエビデンスとしてまとめ、薬剤師の職能証明につなげようというものだ。2015年5月から始まり、150症例ほどが集まっている。
 たむら薬局もここに2人の患者を登録した。田村社長は「当店は患者さんが処方箋を持参するだけでなく、OTCを買ったり家族が薬を受け取りに来るなどで、頻繁に情報収集できます。服薬状況などを常に把握することで治療効果をはっきりさせたい、と考えて研究に参加しました」という。PIIS研究で各薬局が実施する内容は、かかりつけ薬剤師に求められる一元的・継続的な服薬管理そのものとなる。つまり制度化される以前から、かかりつけ業務に取り組んできたわけだ。

地域包括ケアでも存在感示したい


 かかりつけ薬剤師となって以降も、業務内容には大きな変化はない。従来の延長線上で患者と向かい合っている。ただ、今後は地域包括ケアシステムの進展に伴って、薬剤師も地域医療への貢献が求められる。特に在宅は他職種との連携を必要とするだけに、存在感を示すには積極的にチームに溶け込まなくてはならない。田村社長は「かかりつけ薬剤師となったことが、地域包括ケアの中で機能を発揮する糸口になるのでは」と考える。
 たむら薬局は今年8月と9月に同地域で出店する計画があり、4店舗まで増える。ただ、他店の経営の承継や医師からの要請によるもので、規模拡大を意図したものではない。「地域の中でかかりつけ機能を発揮しようと考えると4~5店舗が限界」だからだ。薬剤師の確保にも常に頭を悩ますが、幸いにして実務実習で受け入れた学生が、そのまま就職を希望して入社が決定した。実習期間中に患者に接する上での心構えを説いてきたことが、学生たちの胸に響いたのだろう。こうした姿勢を継続してきたことが、地域に根差したかかりつけ薬局・薬剤師を育てる背景にもなっている。

-考察ー ネグジット総研経営コンサルタント 津留 隆幸


かかりつけ薬剤師指導料に関する取り組み事例として、2薬局をご紹介した。両薬局の共通点は、かかりつけ薬剤師が必要な患者を選定し、薬剤師の支援を通じて具体的なアウトカム(価値)を生み出すことに主眼を置いているという点である。これこそがかかりつけ薬剤師指導料の本質を捉えた活動ではないだろうか。
 本来、かかりつけ薬剤師指導料は「患者のための薬局ビジョン」を実現することを目的に作られた制度の1つである。そのため、「患者のため」になっているかどうかが成果の良し悪しの大きな判断基準となるだろう。患者のためになるアウトカムをいかに創出するかが今、薬局に求められている。
 では、患者にどのようなアウトカムの提供をしていくか。その視点として、「臨床的アウトカム」「患者立脚型アウトカム」「経済的アウトカム」の3つが考えられる。「臨床的アウトカム」は検査値や症状の維持・改善などの治療効果、「患者立脚型アウトカム」はADL・QOLの維持・向上など患者による主観的な評価、「経済的アウトカム」はコスト削減を中心とした費用効果を指す。これらのアウトカムにより、薬剤師の積極介入による副作用を含めた初期症状の発見や、ポリファーマシーの改善を通じて得られるかもしれない。
 アウトカムを意識した取り組みは、薬剤師の関わる度合いが高まる分、個人の労力は増える。また、患者の負担額が増えることがネックになるという声もある。しかし、その実践を通じて患者の満足度が高まることで、他科の処方せん枚数増といった薬局のメリットが期待できることや、治療効果が高まり生涯医療費が少なくなることで、長期的には患者のメリットにも繋がるだろう。前向きに捉えて取り組むこともひとつの可能性ではないかと考えられる。

〔参考資料〕「かかりつけ薬剤師」に関する調査レポート

アンケートモニタのご登録は こちら よりお願い致します。

【調査結果へのリンク・結果の引用・転載について】本調査へのリンクはフリーですので、薬剤師の方にぜひご紹介ください。
なお、データを転載・引用する場合は、薬剤師調査MMPRの調査であることを明記してください。